骨の強度が低下して、骨折しやすくなる病気が骨粗鬆症です。通常、骨というのは常に古い骨が吸収され、新しい骨に作り変えられます。何らかの原因で(主に年齢)骨が吸収されるスピードと骨が形成されるスピードのバランスが崩れ、吸収に追いつかなくなっていきます。これが骨量(骨に含まれるカルシウム等のミネラルの量)や骨密度(単位面積あたりの骨量)を減少させ、骨を折れやすくさせてしまうのです。
主な症状ですが、骨量が減少していくにあたっての自覚症状はありません。転倒して手をつくなどして、容易に骨折することで気づくことが多いです。骨粗鬆症によって骨折しやすい部位は、脊椎(背骨)、手首の骨、腕の付け根の骨、ももの付け根(大腿骨近位部)の骨などです。また、近年の日本では高齢社会に伴い、大腿骨近位部骨折の患者数は増加しており、国内で行われる手術の中で最多となっています。大腿骨近位部骨折をすると寝たきりになりやすいのでその予防が重要です。
発症の原因は大きく2つ(原発性骨粗鬆症、続発性骨粗鬆症)に分けられます。
原発性骨粗鬆症は、日本人の全骨粗鬆症患者様の9割近くを占めるとされるタイプです。この場合の原因としては、閉経によるエストロゲン(女性ホルモンの一種)の著しい減少によって起きる閉経後骨粗鬆症があります。エストロゲンには、骨をつくる骨芽細胞を活性化させる働きもあります。そのため、同ホルモンが分泌されなくなると骨を破壊する細胞(破骨細胞)とのバランスが崩れ、骨形成が追いつかなくなることで骨折しやすくなります。また男女関係なく、加齢によって腸管でのカルシウム吸収が悪くなる、ビタミンDの生成量が減るなどして骨密度が低下していくことで発症する老人性骨粗鬆症もあります。
このほか若い世代であっても、運動不足や寝たきり状態がずっと続いて骨に負荷がかけられない、無理なダイエットで栄養が不足している等で発症することもあります。これらも原発性骨粗鬆症に含まれます。このように日頃の生活習慣も影響することから、同疾患は骨の生活習慣病とも呼ばれています。
もうひとつのタイプである続発性骨粗鬆症は、何らかの病気に罹患している、使用している薬剤の影響などによって発症する骨粗鬆症です。原因となる疾患としては、関節リウマチ、副甲状腺機能亢進症、糖尿病、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群等です。また薬剤では、ステロイド薬の長期投与などによって引き起こされます。
骨粗鬆症の発症の有無を診断するのが骨密度検査です。これは若年者の骨密度平均値(YAM値)と比較して、その数値が70%以下(脆弱性骨折がない場合)と測定された場合に骨粗鬆症と診断されます。なお骨密度検査には、いくつか種類がありますが、なお当院で行う骨密度検査はDXAという方法で行います。これは二種類の異なるX線を照射し、骨密度を測定していく検査法になります。
また骨密度検査以外にも、基礎疾患の有無を調べる血液検査、脊椎などが圧迫骨折してないかを調べる単純X線撮影(レントゲン)を行うこともあります。
骨の生活習慣病とも呼ばれる骨粗鬆症の予防と治療で重要なことは①食事、②運動、③薬物療法です。食事面では、ビタミンDやビタミンK、カルシウムを多く含む食品を積極的に摂取していきます。このほか、骨を丈夫にするためには適度に負荷をかけなくてはなりません。そのために運動を習慣化します。内容としては、ウォーキング、軽度なジョギング、サイクリングなど、1日30分以上の有酸素運動で強度としては息がやや弾む程度で十分ですが、継続的に行うようにしてください。また転倒防止のために体幹を鍛える筋力トレーニングも大切です。
薬物療法では、これ以上の骨密度の低下を防ぎ、骨折をしないようにすることが大切です。骨の吸収を抑える薬(ビスホスホネート、SERM、デノスマブ 等)、骨の形成を促進する薬(テリパラチド、ロモソズマブ 等)が用いられます。そのほか、ビタミンD製剤やカルシウム製剤などが使われることもあります。